業界関連NEWS

2008/08/20

メタボ、国際基準統一へ おなか優先、日本だけに

<メタボ、国際基準統一へ おなか優先、日本だけに>

 ◇男性85センチ、女性90センチ
 腹囲測定をメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)診断の第一条件として、今年4月から始まった特定健診・保健指導(メタボ健診)。「男性85センチ、女性90センチ」という腹囲基準の分かりやすさが注目を集めたが、肝心の腹囲が国際的な統一基準の必須条件から外されることになった。世界とは異なる基準で、公的健診を続けることは妥当なのだろうか。【大場あい、永山悦子】

 ◇健診現場も「根拠に疑問」
 先月、東京都江戸川区でメタボ健診を受けた60代の女性は「腹囲を測ってもらえれば、食事に気をつけるきっかけになる」と屈託なく話した。受診者は順に、ついたてで仕切られたスペースに入り、腹を出してメジャーを巻かれた。

 メタボ健診は、メタボや予備群に該当する人を健診で見つけ出し、生活習慣改善のための保健指導を実施する新しい公的健診だ。まず腹囲を基準に受診者を振り分け、その後、血液検査の結果などを加味して指導の必要性や内容が決められる。だが、保健指導に携わる看護師は「去年までと検査項目が変わったことに気づいても、何を目的とした健診か理解している人は少ない」と漏らす。各地の健診会場では腹囲測定に対し、「根拠が理解できない」「スポーツで鍛え腹囲が大きい場合も基準に引っかかるのはおかしい」など疑問の声が上がっている。

 厚生労働省のメタボ健診の基本指針は「生活習慣病の発症には内臓脂肪の蓄積が関与している」とする。内臓脂肪が蓄積した肥満に高血糖や高血圧などが重なった状態がメタボで、心筋梗塞(こうそく)など心血管疾患を発症しやすくなるとの考え方だ。腹囲測定は、内臓脂肪の多い人を見つけるために導入した。

 だが、メタボ健診の基になっている日本内科学会など8学会による腹囲基準には「世界で唯一、男性の基準が女性より小さい」など、策定当初から再検討を求める声が相次いだ。8学会は今年3月、再検討に取り組む方針を発表し、厚労省研究班も2万4000人のデータから最適な基準を導き出す作業に着手した。腹囲基準を何センチにすべきか、今なお議論が続いている。

 ◇心血管疾患との関連不明
 腹囲を第一条件にした日本の基準に当てはまる人が、本当に心筋梗塞などの心血管疾患を発症しやすいのかも不明のままだ。

 厚労省研究班の磯博康・大阪大教授(公衆衛生学)が茨城県内で実施した疫学調査(約2600人対象)。日本の基準でメタボとされた人が、心血管疾患を発症する危険性は、メタボでないとされた人と変わらなかった。一方、腹囲を必須条件としていない米国コレステロール教育プログラム(NCEP)の基準でメタボとされた人は、発症の危険性が高かった。

 磯教授は「日本人を対象にメタボと心血管疾患の関係を調べた研究はあまりない。これから最適な基準を検討する段階」と話す。

 欧米では、心血管疾患を起こしやすい人を見つけるには、NCEP基準が適しているとの研究成果が多い。ある専門家は「海外に論文を出す時は、日本の基準では掲載を認められないため、NCEP基準で分析する人がほとんど」と明かす。

 しかも、NCEP基準ですら、心血管疾患との関係に疑問を投げかける研究もある。英医学誌ランセットに5月、英国での疫学研究が発表された。60〜80代の計約7500人を対象に、NCEPの基準と心血管疾患との関係を調べると、基準に合致してもしなくても、発症の危険性にほとんど差はなかった。

 研究を担当した英グラスゴー大のナビード・サッター教授は「日本が腹囲をメタボ健診に使っていると聞いて驚いた。この基準で心血管疾患の危険性の高い人を見つけようという方法は医学的に意味がなく、貧弱な医療としかいいようがない」とあきれている。

 報道機関も冷ややかだ。

 「細いウエストを探し求め、膨大な数の人を測る日本」。6月中旬、米紙ニューヨーク・タイムズにこんな見出しの記事が掲載された。日本のメタボ健診を「太りすぎがあまりいない日本で、一般市民をスリム化するために始まった野心的なキャンペーン」と紹介し、腹囲の結果に一喜一憂する受診者の様子や自治体の担当者らのコメントとともに、制度の目的が「医療費抑制という政治的問題にある」と解説した。

 ◇「労働時間の短縮が先だ」−−独自の重点設ける動きも
 健診の重点をメタボ以外に置く動きもある。

 ヤマハ(浜松市)の健康管理センターが取り組むのは、社員への禁煙指導だ。その結果、同社本社工場では男性の喫煙率が25%と、全国平均(約4割)よりも大幅に低い水準となった。同社は11年度から全国の同社施設敷地内の全面禁煙に踏み切る。倉田千弘所長は「メタボ基準に科学的根拠はないが、禁煙には、がんと心血管疾患の予防につながるという世界中の研究成果がある」と指摘する。

 愛知医科大が会社員360人を対象に実施した調査では、1カ月の残業時間が長い人ほど、心血管疾患の危険性が高かった。

 渡辺美寿津准教授(メンタルヘルス)は「特定健診は個人に生活習慣の改善を求めるだけで、職場への働きかけが不十分だ。労働時間の短縮など、労働環境を変えなければ、心血管疾患の危険性は消えない」と話している。

                        【2008年8月20日 毎日新聞東京朝刊】



会社案内
企業理念・会社概要・
個人情報保護方針
代表挨拶
サービス案内
特定保健事業
メタボリック対策
減量サポート
食育・栄養相談
旬の食材の栄養を伝える
セミナー事業
管理栄養士セミナー
このウェブサイトに関するご質問、お問い合わせ、ご意見、資料請求は、 info@health-management.co.jpまでお願いします。